好きなんだから仕方ない。
絶望に心が染まりかけた時、宿屋で俺にここに行くよう提案してくれた魂が現れた。お前はあの時の、と声に近付けた事にお礼を言おうとすると壁が床との境目から粘土のように持ち上がり新しい道を作った。
先に行くよう、身振りで示してくれた魂。ここに行くよう言ってくれた事、そのおかげで声に近付けた事を感謝し先へ急いだ。
彼女に会える。やっとお礼を言える。やっと自分の手で守れる。やっと、彼女の涙を拭ってあげられる。
突き当たりまで走って分かったのは大きな扉の奥で小さな声ですすり泣く彼女の存在だった。突進しても、扉を叩いて呼び掛けても彼女には聞こえない。部屋の扉は開かない。
なら、開けてくれるまで待とう。話しかけてくれるまで待とう。心から幸せだと笑ってほしいだけだから。

「・・・落ち着いたか?」

「まだいてくれたの?」

「俺が君を守る。いつかどこかでした約束だから」
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