好きなんだから仕方ない。
眠っていただけで良かった。王族なだけあって理不尽に命を狙われる事もあるから返事が帰ってこない時はとても不安で仕方ないんだ。

「お手間お掛け致しました。エイミア様の事、宜しくお願い致します」

「クロエラさん・・・。あんた、本当に惚れてんだな」

「姫と執事という事実以外、何もありません。考えすぎです。では」

軽く頭を下げ、隣にある自分の寝室に戻った。何かあった時のために専属の者は直接自室へ行けるようになっている。
まだ一度も使った事のないこの扉だけが救いだった。額を付ければ彼女と繋がっているような気持ちになれるから。
兵士の最後の言葉、エイミア様に俺が惚れている。確かに間違ってはいない。俺はエイミア様を愛している。でも、仕事に私情は持ち込んではいない。持ち込んだとしても表には出さないさ。だって俺が仕えているのはこの城で姫として暮らしているエイミア様であってエイミアという一人の人じゃない。
彼女が一言、普通に戻ると言えば俺たちの関係は無くなってしまうのだから。元々、そういう人なのだから。
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