好きなんだから仕方ない。
我関せずなメルシオが出ていった後、あの子がいると言っていた衣装箪笥に近付いた。怖がらせないように声をかけて生きているかどうかだけ確認したかった。

「・・・ここにいるの?」

「あ・・・、う・・・」

「私はエミィ。・・・あなたの名前は?」

「エ・・・ミ・・・」

私の名前を呼んだかと思うと、彼はゆっくりと少しだけ衣装箪笥の戸を開けてくれた。薄暗さが住んでいた檻に似ていたのかななんて思いながら自分から出てきてくれるのを待った。
ガドウが焦る理由も分かってる。もう百年しか残っていないから他の神だってきっと焦っている。でも、それじゃダメな気がするの。こっちの都合で強制的に契約したら彼に恐怖を植え付けるだけだと思うの。
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