好きなんだから仕方ない。
「でもここ、中に入れないんだ。数人の魂が指先を入れただけで中に吸い込まれていったんだよ」

「吸い込まれていったの?この中に?」

「うん。だから絶対触っちゃダメだよ!」

何だ。吸い込まれたというトワの言葉にエミィ様は反応した。いつもの普通に話を聞いている時の反応じゃない。こんな中途半端に真剣な表情、初めて見た。ほんの少し眉が動き、少しだけ目がきりっときつくなった。
確かに触れただけで池に吸い込まれるという話はあまり聞かない。でも、最近はあまり聞かなくなっただけでエミィ様たちが神になる前は普通にあった事だと聞いている。
何が引っ掛かっているのだろう。彼女は察する人は察するが質問するほどでもないという中途半端な表情でステアダの背中に乗った。トワはまた俺と飛ぶという事で互いに腕を掴み合い帰路に着いた。
神の住み処に帰るまでの間、会話に支障が無い程度に考え事をしているようだった。気になるけれど、あまりの表に出ない真剣さに訊いて良い物なのかと躊躇っている俺がいた。
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