好きなんだから仕方ない。
今までは彼女を守れるのなら何でも良かった。自分の命も捨てて構わないと思っていた。彼女のために死ねるのなら本望だと思っていたから。でも、それは自己中心的な考えだったんだよな。残された者の気持ちまで考えていなかったのだから。

「自室にお連れするか?」

「あぁ。付いてきてくれるか?」

「勿論だ」

「待て。・・・その子がどんな決断をしようと、お前たちだけはそばにいてやってくれ。・・・頼む」

眠ってしまった事を悟った専属の兵士が自室にお連れするかと訊いてきてくれた。今の俺の心境では訊いてきてくれなければずっとこのまま抱き締め続けていた事だろう。
国王に止められたのはエイミア様を抱き上げ、一礼をして大広間から出ていこうとした時だった。
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