好きなんだから仕方ない。
ヅヌダクとカナケトと俺の三人を乗せ、主人の息子は馬車を走らせた。無事でいてくれと願いながら、一日も早い到着を待った。途中、商いをするために何度か寄り道をしていたが協力してもらっている身としては何も言えなかった。

「しっかし、おっさんたちも物好きだなー。あんな荒れ野に何しに行くんだよ?」

「どういう事ですか?」

「そのまんまの意味だよ。あの村は十数年前から荒れ野でね。最近は村への訪問者や郵便物を別の町に呼んでるって話。確か名前は・・・。あぁ、そう。カナクサ町のパドって言う俺たちより少し年上の男だったかな」

パド。エイミア様の故郷へ連れ添った男と同じ名前。
いや、待て。焦るな。本当に知人かもしれないだろ。でも、故郷が荒れ野になってるなんてあいつは一言も言わなかった。
息子と一緒に旅をしている男の話を聞きながら、俺たちは気持ちだけを焦らせていた。早く行かなければエイミア様が危ないかもしれない。でも、思い過ごしかもしれない。
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