ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい
俺は生きた心地がしなかった。さっきは吐きそうで死にそうでそれどころではなかったが、体調が回復するにつれて、今度は羞恥心で死にそうになる。
初対面のお姉さんに介抱させるって何?
その上吐いたものの処理まで任せて。
もう人間やめるべきじゃない?
「ちょっとはラクになった?」
「はあ……いや、はい……」
とても舐めた口を利ける立場ではなく、言い直した。
カウンター席に座ったまま縮こまる。全部を吐き出したお陰で気分はスッキリとしていた。ただ自分のあまりの醜態が受け入れ難く、アルコールとは関係なく頭が痛い。
お姉さんはカウンターの中のシンクで手を洗いながら、何気なく会話を続けてくる。
「それはよかった。胃酸って結構強いから、よければ奥で歯磨きもするといいわ。使い捨て歯ブラシがいくつかあると思う」
親切すぎる……。未だかつて初対面の人からこんなに優しくされたことがあっただろうか。もしかしてなんか騙されてる?