ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい

 少し身を乗り出して覗き込むと、下には更にもう一段棚があった。そこには酒のボトルではなく、いろんな種類のグラスが置かれている。よく見る背が高い一般的なグラスに、ワイングラス。そして脚の長い逆三角形のグラスに、背の低いロックグラス。よくよく見ると似ていても微妙に形状が違うグラスもあり、いくつ種類があるのかパッと見では判断がつかない。


(ってことは、この店……)


 大量の酒のボトルに多様なグラス。カウンターのあるこの店の配置。そして内装の雰囲気からして……。

 ここが何の店か見当をつけていると、外から伸びてきていた光に影が差した。お姉さんが店の外から戻ってきた。手にはバケツ。それから汚れた新聞の入ったポリ袋。それを見て俺はサッと青褪めた。

 ――そうだった!
 なんで人に汚物の処理させてんだよ!


「ほんっっっとに、すみません……!」
「ん? あー……ふふっ。いいよ気にしなくて」


 深々と頭を下げる俺の頭上で、お姉さんは機嫌よく笑った。そのまま汚物を持ってバックヤードへ向かい、しばらくするとまたカウンターのほうへ戻ってきた。恐らく裏口のほうにゴミ捨て場があって、そこに汚物を持っていったんだろう。


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