ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい


 お姉さんは俺がすべてを吐き切るまで背中を撫で続けてくれた。そして俺の嘔吐が治まると速やかに店の中へと俺を担ぎ込み、厨房の流し台で口をゆすがせてくれた。

 それから部屋の奥からペットボトルのスポーツドリンクを持ってきて、「そこに座ってこれ飲んで。飲めるだけでいいから」と手渡し、自分は新聞紙やバケツやポリ袋を持って店の外へ戻っていった。


 一体何が起きたのかと、俺はスポーツドリンクを片手に放心する。貰ったそれを飲んだことで吐くときに感じた喉の焼ける感覚は少し落ち着き、気分も安定していた。心に余裕が生まれ、ゆっくりとあたりを見回す。

 照明は点けられていなかった。開け放たれたドアから朝の光が入り込み、俺が座っているカウンターチェアのところまで光の筋が伸びて、薄暗い店内の様子をぼんやりと浮かび上がらせている。

 カウンターを挟んで奥の棚にはずらりと酒のボトルが並んでいた。大きくは三段に分かれていて、一段の中にも奥にひな段があり、実質は六段。見覚えのある気がするデザインのボトルから絶対に初めて見たというものまで。すべてのラベルが正面を向いて、埃を被ることもなくピカピカと輝いている。

 一体何本あるんだ?

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