その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
5コール以上鳴らして出なかったら、家に帰ろう。
自分の中でルールを決めて、スマホを耳にあてる。
ドキドキしながらそうしていると、ワンコール目が鳴り終わらないうちに広沢くんが電話をとった。
「も、もしもし。れーこ、さん?」
まさか広沢くんがこんなにすぐに出てくるとは思わなくて焦ったけれど、聞こえてきた彼の声も電話越しにわかるくらい動揺していた。
「あ、えっと。お疲れさま……」
「お、お疲れさまです。こんな時間に、どうしたんですか?」
返ってくる広沢くんの声は相変わらず動揺しているみたいだったけど、今日のオフィスで私に露骨な態度を取ってきた彼の声とは違っていた。
だから、私も安心して気持ちが少し穏やかになる。
「どうもしないんだけど……広沢くんの声を、ちゃんと聞きたいなと思って」
「え?」
「広沢くんがどう思ってるはわからないんだけど。私はこのままあなたの手を離したくないって思っていて。そのことを、きちんと伝えておきたいと思ったの」
「…………」