その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


おとなしくて、私が決めたことに反対をすることなどなかった美耶子は、「母」になってから以前よりも強くたくましくなった。


「まさか美耶子に、自分のことを抑えて周りを優先させてるって見抜かれてるとは思わなかった」

「そうですか?そんなの、近くでよく見てたらすぐ気付きますよ。れーこさん、意外とわかりやすいから」

「わかりやすいなんて……そんなこと言ってきた人、広沢くんが初めてだけど」

「じゃぁ、俺がいつもれーこさんのこと見過ぎてるのかも」

マグカップを口にあてながら、広沢くんが悪戯っぽく瞳を揺らす。

その仕草に私の頬にかっと一気に熱が溜まった。

恥ずかしさを誤魔化すためにコーヒーを飲もうと、右手で持っていたマグカップに左手を添える。

そのとき、薬指に嵌めていた指輪がカップとぶつかって、カチンと高い音を立てた。

しまった。普段は指輪なんてつけないから、慣れなくて結構激しめにぶつけてしまった……


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