その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
私ってば、つい甘やかされてなにしてるんだろう。
腕を突っぱねて、焦って広沢くんから離れようとしたけれど、私の腰の後ろに回った彼の腕の力が強くて逃げられない。
「いて。逃げちゃダメ」
笑顔で私を見上げる広沢くんと、眉間を寄せて彼を睨み下ろす私との間でしばらく無言の攻防が続いたけれど……
隙をついて顔を近づけてきた広沢くんからのキスで、抵抗する腕の力が抜けた。
「今日、れーこさんのご家族にお会いして思いました。お父さんも美耶子さんも、れーこさんのこと大事に想ってるんだなって」
私の右頬に手を添えた広沢くんが、左側の首筋をなぞるようにキスを落とす。
それからもう片方の手で左の頬を掬って私の顔を両方の手で挟むと、真っ直ぐに私と目を合わせた。
「だからこれからは、俺がれーこさんのこと、いっぱい大事に想いますね」
眩しげに目を細めた広沢くんが、今まで見たなかで一番優しい顔で微笑む。
そこにだけ明かりが灯ったような、暖かな笑顔に胸が詰まる。