その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
私と結婚したことで、広沢くんのほうは周りからいろいろと冷やかされていたけれど、これまで職場でどんなときも基本的に無表情という鉄壁を作ってきた私を冷やかそうとするような強者はいなかった。
気になりながらも、みんな私に対しては一歩引いて核心を突いてこない。
それはそれで多少複雑な気持ちもしたけれど、広沢くんが支社を離れてからも、私はこれまでと変わらず仕事を続けることができた。
平日はお互いにそれぞれ別の場所で仕事をして、土日に広沢くんが住むマンションに会いに行ったり、彼が私のところに来たりする。
無理なことではなかったけれど、仕事で疲れている週末に長距離を移動するのは予想以上にハードで。
週末婚でも我慢する、と言ったのは広沢くんだったけど、彼のほうが先に根をあげた。
「あー。やっぱり、毎日れーこさんの顔が見たいし、たまには『おかえり』って言って欲しい」
週末婚を初めて2ヶ月過ぎた頃。私を抱きしめた広沢くんに、甘えた声でそう言われて、その言葉がなんの違和感もなくすっと胸に落ちた。