その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「そうよね。本格的にこっちで転職先探してみようかな……」
それに私のほうも、そんな言葉がぽろっと漏れるくらいに、離れていることが限界だった。
「無理しなくていいですよ。ちょっと言ってみただけだから」
そう言いながらも、広沢くんが少し嬉しそうにしていたから。
ほとんど迷うことなく、心が決まった。
今の会社には新卒で入社してから長いこと勤めてきて、ここで私がやれることはやりきった。そういう感もある。
よくよく考えてみると、今の会社を離れることにそこまで大きな未練はなかった。
ただ、年齢的に転職はギリギリ微妙なラインかな、とは思っていた。
不安も抱えつつ始めた転職活動は、予想外にうまく事が運び……
心を決めた1ヶ月後には、広沢くんの住む場所から通える会社の内定が決まっていた。
そこから2ヶ月ほどかけて引き継ぎを行い、今日が新卒で入社した会社の最終出勤日になる。
「正直なところ、碓氷が抜けたらうちの部署はしばらく大変だろうな」
笑うのを辞めた企画部長が、名残惜し気に私の顔を見る。