その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「そう、ね。今も疑ってた?」
「いえ、疑うとかじゃなくて。ただ、そうなんだなーって。あるときから、広沢くんには誰か好きな人か彼女がいるんだろうなーとは感じてたんですけど。碓氷さんだとは思わなかったから。いつから付き合ってたんですか?」
「桐谷くんや新城さんが入ってくる3ヶ月くらい前から、かな……」
「結構長いですね。全然気付きませんでした」
「ガッカリした?広沢くんの結婚相手が私で。だって秦野さん、広沢くんのこと……」
最後までは聞かなかったけれど、秦野さんは私の意図するところを理解してくれたらしい。
秦野さんが少し考えるように首を傾げてから、私を上目遣いに見て笑う。
「驚きはしましたけど、ガッカリはしてません。確氷さんのこと、先輩として憧れてますから」
「嘘でしょ、それ」
私に少し厳しく言われただけで泣きそうになったり、責任やトラブルを人に押し付けていつも逃げ出してばかりだったし。
秦野さんから恨めしげに見られることはあっても、憧れの眼差しを向けられたことはない気がする。