その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「あの、これ。転職祝い、というか。結婚祝いというか……」
「私に?」
秦野さんが恥ずかしそうにコクンと頷いて、私に綺麗な紙袋を手渡す。
「ありがとう」
受け取りながらお礼を言うと、秦野さんが顔を赤くして困ったように視線をうろうろさせた。
「あの、あんまり期待させるようなものじゃなくて。引越しのときに荷物にならないようにと思って、タオル……なんですけど。よかったら、新居で使ってください」
「ありがとう。大事に使わせてもらうわね」
なんとなく、秦野さんが悩んで選んでくれたのかなというのが伝わってきた。
笑顔を返すと、まだ頬を染めたままの秦野さんが上目遣いに訊ねてきた。
「広沢くんは、元気ですか?」
「元気よ。私は週末しか会ってないけど。本社での仕事、頑張ってるみたい」
「そうですか……碓氷さん、ほんとに広沢くんと結婚してるんですね」
秦野さんが私の左手をチラッと見て、確かめるように言う。