その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
他の同僚たちにしたのと同じように、秦野さんとの噂を否定をしたら、「じゃぁ、私はどうですかね?」と笑顔で迫ってきたそうだ。
あんまり笑顔でさらっと訊かれたものだから、広沢くんも最初は冗談かと思って笑って誤魔化したらしいけど。
でも、どうやらそれは冗談ではなかったようで。
ここ1週間、新城さんは隙あらば広沢くんに纏わりついている。
秦野さんの目を盗んでデスクを離れては、広沢くんから仕事をもらいにいったり。
昼休みや退社のタイミングで席を立った広沢くんを偶然を装って追いかけたり。
せっかく、秦野さんの指揮を高めるために広沢くんに彼女を飲みに誘ってもらったのに、そのことが結果的に裏目に出てしまったようだ。
「新城には、同期として俺からさりげなく話してみます。今みたいな態度は良くないって。まだ、学生気分が抜けてないのかも……」
私たちの話をそばで聞いていた桐谷くんが、申し訳なさそうに眉尻を垂れる。
だけど、桐谷くんにそんな顔をさせてしまったこちらのほうが申し訳なかった。
今日は、新歓なのに。