その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


「ありがとう。桐谷くんは気にしなくて大丈夫よ。こんな話聞かせてごめんなさい」

私の言葉に、今度は秦野さんと秋元くんが気まずそうな表情でそれぞれ黙り込んだ。

そこから、私の周りは会話が途絶えて静かになってしまう。

桐谷くんがいるのに暗い雰囲気にしてしまって申し訳なかったけれど、互いに目も合わそうとしない秦野さんと秋元くんの前で、適当な話題も思いつかない。

こういうとき、普段から仕事のこと以外でほとんど同僚と会話していない私はダメだ。

さりげなく広沢くんのほうに視線を向けると、彼は徐々に距離を詰めてくる新城さんを上手に交わしながらも、ちゃんと笑顔は絶やさない。

彼女を必要以上に避けたり、近付けすぎたりもせず、周りともちゃんと調和をとっている。

そういうところは、見ていてすごいと思う。

ビールのグラスを口に運びながら気付かれないように広沢くんを見ていると、彼の近くにいた菅野さんが、グラスを持って立ち上がった。


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