その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「あ、あの。私が向こうのテーブルに移動しようか?」
焦って座敷の席で膝立ちになったら、広沢くん以外の3人が不思議そうな顔で私のことを見上げてきた。
「急にどうしたんですか?碓氷さん」
「あ、ほら。広沢くんが来てそっち狭そうだから、私が移動すればちょうどいいかな、って……」
だけど、どうやら今はそんなことをいうタイミングではなかったらしい。
一様に不思議そうな秋元くんたちの顔を見下ろして、私は中途半端に腰を浮かしたまま、今度は座るタイミングまでをも見失ってしまった。
「え、っと……」
「碓氷さんは動かなくていいですよ。一番先輩だし」
困っていると、少し腰を浮かせた広沢くんが、ふざけたように笑って私の手を引っ張ってくれる。
促されるようにして元の場所に座ったとき、広沢くんが私だけにわかるようにすっと目を細めたのがわかって恥ずかしかった。
「そうそう。碓氷さんは移動しないでくださいよ。碓氷さん、めったにこういう飲み会に参加されないし。たまにはゆっくりお話ししたいです」
「うん、俺も」