その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「碓氷さんの雰囲気が変わったの、彼氏の影響だったりして」
新しく運ばれたきたビールのグラスをつかんでグッと眉間を寄せていたら、菅野さんが私の顔を正面から見てにこりと笑う。
想像もしていなかった彼女からの言葉に、思わずビールグラスをひっくり返しそうになった。
「あれ、図星突いちゃいました?」
私が珍しく動揺を見せたものだから、菅野さんが意外そうに目を瞠る。
その瞳の奥に明らかな好奇心の色が灯るのがわかった。
「ごめんなさい。すごく失礼なんですけど、碓氷さんて恋愛とかそういうのと縁がないのかなって勝手に思ってました。職場に全くプライベート持ち込まないし、どんなときも冷静だし。でも、そういうことを見せてないだけなんですよね」
「そう、ね。まぁ……昔からプライベートと仕事を分けるようには気を付けてはいる、けど……」
「さすがです」
菅野さんがすかさずそう言ってくれたけれど、ビールのグラスを触りながら、私は自身の言葉の歯切れの悪さを自覚していた。