その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
広沢くんの些細な仕草にまた動揺させられそうになった私は、慌ててビールのグラスを口に運んで彼が視界に入らないようにする。
「碓氷さん。今のタイミングでしかこんな話できなさそうなので、碓井さんの彼氏のこと訊いてもいいですか?」
結構なハイペースで飲んでいるところに、菅野さんがとんでもない質問をぶつけてくるから咽せかけた。
「大丈夫ですか?碓氷さん」
ゴホッと変な咳をしながらグラスを置くと、隣の桐谷くんが本気で驚いて飛び上がる。
「ごめなさい、大丈夫」
口元に手をあててまだ少し咳をしていると、秋元くんが驚いたように、菅野さんがニヤリとしながら私のことを見ていた。
「何?」
「いや、碓氷さんもふつーに動揺することがあるんだなって」
「でも、それくらい素敵な彼氏ってことですよね?ますます気になります」
目を丸くして珍しい生き物でも観察しているかのように秋元くんがつぶやき、にやけ顔の菅野さんが手にしたグラスをぐっと私のほうに突き出してくる。