その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「もう、私の話はいいから」
声を低くして顔を顰めると、菅野さんが残念そうにグラスをトンっとテーブルに置いた。
「えー、聞きたかったです。ね、広沢さん」
不満気に唇を尖らせて可愛く絡んでくる菅野さんをさりげなく交わしながら、広沢くんが口端を引きあげる。
「そうですね。俺もすっげー気になります。碓氷さんの彼氏の話」
他の人が気付いているかどうかはしらないけど、私にだけは彼の話し方のわざとらしさも、瞳の奥が意地悪く光るのもわかる。
「くだらないこと言わないで。今日の主役は新入社員の桐谷くんと新城さんなんだから」
「やっぱりいつもの碓氷さんだ」
素っ気ない声で跳ね除けると、秋元くんと菅野くんが愉しげに笑う。それにつられて笑う桐谷くん。
だけど、広沢くんだけは周囲の3人を笑顔で俯瞰していた。