その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
まさか桐谷くんにそんなことを聞き返されるとは思わなくて、唖然としながら数回目を瞬かせる。
だけど、驚いたのは私だけではなかったらしい。桐谷くんも私がそんな反応をみせるとは思わなかったようで、焦ったように慌てて顔の前で手を振った。
「あ、すいません。深い意味はないんです。ただ、菅野さんや秋元さんが、碓氷さんは普段はあまり社内の飲み会には参加しないって言ってたし。今日は新歓だから義務的に参加してくれたのかなーってふと思っちゃって。だけど、失礼な質問でしたよね」
相当焦ったのか、桐谷くんが早口になる。
「あぁ、いいの。気を遣わせてごめんなさい。そんなこと聞かれると思わなかったから驚いただけで、失礼だなんて思ってないから気にしないで」
私がそう言うと、桐谷くんが安堵したように頬を緩めた。
「桐谷くん、飲み会のときに、『人事の人から企画部の碓氷は厳しいから気をつけろって言われた』って言ってたじゃない?」
「あ、はい……」
私がその話題を振ると、一瞬緩んだ桐谷くんの頬がまた気まずそうに強張る。