その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「どういう意味ですか?」
私の言い方に嫌味がこもり過ぎていたのか、広沢くんがピクリと頬を痙攣らせる。
「今朝、桐谷くんから聞いたの。広沢くん、新歓の飲み会のあと、酔っぱらった新城さんのこと家まで送って、手を出しちゃったんでしょう?」
「何ですか、それ?」
「さぁ?どうやら今はそんな噂が流れてるみたいだけど?」
「そんな言い方するってことは、れーこさんは俺のこと疑ってるってことですか?」
表情をなくした広沢くんが、私の顔をジッと見つめながら低い声で静かに訊ねてくる。
それに対して私は、唇をきゅっと引き結んで黙り込んでしまった。
桐谷くんから聞いた噂を信じているわけじゃない。むしろ、それがただの噂だってことは私が一番よくわかっている。
それなのにわざと嫌味な言い方をしてしまったのは、胸の奥がモヤモヤとするからだ。
広沢くんはどんな些細なことでも、私を気にして心配したり怒ったりしてくれるけど、彼が心配するようなことが私の身に起きる可能性は極めて低い。