その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
ふっと唇を歪めるようにして笑うと、広沢くんが不機嫌そうに眉を顰めた。
「やっぱりって、なんですか。桐谷が給湯室に行ったきりなかなか戻ってこないと思ったら、れーこさんと並んで出てくるし。何かあったのかな、って疑うじゃないですか」
「何かなんて、あるわけないじゃない」
私が冷静にそう答えると、広沢くんがますます不機嫌そうな顔になる。
「わかんないですよ。この前の飲み会のとき、桐谷も秋元も、れーこさんに対して調子のいいこと言ってたし」
「調子のいいことって?」
「れーこさんのこと、きれーだとか優しいとか」
「ただの社交辞令でしょ?」
「そんな呑気なこと言って。油断してたら、社内ですぐに噂たてられちゃいますよ」
「私は大丈夫よ。すぐに噂をたてられるのは、どちらかというと私じゃなくて広沢くんでしょ?」
私が誰かとどうこうなんて噂、たつはずもないのに。
広沢くんが不機嫌そうにやたらと私ばかり責めてくるから、返す言葉がつい皮肉っぽくなってしまった。