その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「俺、時間なので、先に戻りますね。俺の分、ここに置いときます」
先に食べ終えてすっと立ち上がった広沢くんが、財布からお金を出してテーブルの端に載せる。
「あ、うん……」
結局気まずいままに、広沢くんが行ってしまう。
何か言わなきゃ……違う、それより謝らないと。
私の横を完全に歩き過ぎようとする直前で、広沢くんのスーツのジャケットの裾をつかんで引き止める。
「れーこさん?」
不安な気持ちで見上げたら、広沢くんが僅かに目を見開いて私の名前を優しく呼んだ。
「あの……」
ほとんど衝動的に引き留めたものの、うまく言葉が紡げない。
しばらく待っていてくれた広沢くんだったけれど、いつまでも話し出さない私に、ついには唇を歪めて苦笑した。
「れーこさん。俺、もう行かなきゃ」
「そう、よね……」
「れーこさんが聞いたっていう噂、俺はさっき初めて聞きました」
「え?」