その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
広沢くんのスーツの裾からすっと手が離れて落ちる。
茫然と見上げると、彼が困ったような、それでいて何だか泣きそうな目をして薄く笑った。
「知らなかったから。嫌な思いさせてすみませんでした」
「広沢くん、違……」
嫌な言い方をした私が先に謝るべきだったのに。結局彼に先に謝らせてしまった罪悪感で、胸の奥が鈍く傷んだ。
「飲み会のあと、新城さんが腕つかんだまま全然離してくれなくて。仕方なくっていうか、ほとんど強制的にオフィスの近くの最寄り駅まで連れて行かれたんですけど……でも、そこで別れて帰りました。だから、れーこさんが聞いた噂、全部違う」
「ごめんなさい。本当は、ちゃんとわかってた。全部、ただの噂話だって」
うつむいて、今さら謝罪の言葉を口にしたら、広沢くんが私の頭にそっと手を載せてきた。
「じゃぁ、これで仲直り」
うつむいたまま無言で頷くと、頭上で広沢くんが笑う気配がする。
「今日、仕事終わったられーこさん家に行ってもいいですか?」
落ちてくる、優しい声音に胸が震える。