可愛らしさの欠片もない
「…会ってない、その言葉を聞けていたら、私は想像しなかった…。最近の先輩のことで、何か知ってますか?」
「いや」
また即答。でも……知ってても隠してるかもしれない。
「本当に、何も知らないですか?」
二度も聞くということは返答を疑っているということ、信じてないってことになるのに。…馬鹿だから畳み掛けるように聞いてしまった。
「意味がよく解らない、会社で会ってるだろ?何かあったのか」
それは……知らないというのだから言えない。
「言えないよな」
「…はい」
さすがだ。疲れていても頭は回ってる。
「ん」
知らないんだ。
「…では、はぁ、馬鹿な話だと思って聞いてください。
私とつき合うと決めたことは先輩と甲斐さんの仲を隠すためだと思ってしまいました。お互いの気持ちは知ってる。それは終わってると聞きましたが、実は…。奥さんとの離婚が成立するのを待たせているのは先輩で、先輩とのことがバレないように、私を利用した。…上手く出会いを装うように、私の前に現れた。私の情報は先輩から聞いて。何時の電車に乗ってるとか、そんなことも解っていて。そして」
とうとう……まだできてはいけないタイミングなのに妊娠してしまった。…これは言えないけど。
「……凄いな」
「呆れましたか?こんなことを思ってしまう私は甲斐さんを信じてないってことです」
「そうなるな」
私はこんなに口数が多いのに。甲斐さんから返って来る言葉は本当短い。