可愛らしさの欠片もない

馬鹿なことだとは思ったけど、甲斐さんに私の思っていることを話してみようと思った。
こういうことは面と向かっての方がいいと思った。メールでは一方的過ぎるし、同じように呆れられたとしても反応を目で確かめることが出来る。

【聞いてほしいことがあります。うちに来てもらうことはできますか?】

まだ仕事が忙しいのなら、無理かもしれないけど。

……。

また返ってこないかな。そういえば、まだ本の数回…会ってる回数は少ないけど、いつもうちなんだ…。
別居してるってことだけど、甲斐さんの部屋に呼ばれたことはない…。駄目駄目。自分から行きたいと言ってもないし、私の部屋の方が便利なのかもしれない。…便利?あー駄目駄目、都合がいいとか、そういう言葉を取り上げて考えては…。

【遅くなってもいいなら今夜行ける】

あ。来れるんだ。良かった。

【ではお願いします、待ってます】

大体何時頃になりそうなのか、…聞いても仕事ならある程度めどがつくまでとか、時間は計れないときがあるから。待ってるしかない。


ピンポン。…来た。

「お疲れ様でした」

「思ったより遅くなった。ごめん。はぁ、疲れた」

疲れたって、口に出して言わない人かと思ってた。弱いところは見せない人だと。そういえば、顔がちょっと疲れてるかな。

「あ、あの…お風呂、入りますか?入れるようにはしてます。それから、もし、何もまだ食べてないなら、…気分とか口に合わないかもしれないですけど、少しだけ用意してあります」

夜食程度のもので、大したものではない。

「優李…」

ん?ちょっと表情が緩んだのかな…。

「はい?でも、話を聞いてほしいってお願いしてたから、話を先に、早く済ませた方がいいですよね」

…ん?…顔…無表情になった。

「…ああ、そうだな」

やっぱり、ご飯も、お風呂も余計なことだったかな。

「座ってください。珈琲をいれてきます」

上着を脱ぎ、ソファの背にかけると腰かけた。長く吐く息が微かに聞こえた。本当に疲れてるんだ。それとも、私の話があるってことに疲れを感じて…。

珈琲を入れて戻った。

「どうぞ。早速ですけど…話というのは、……私の疑問、それから勝手に想像に発展して、どうしてもそのままでは無理になってきて…。だから、そんなことって思うようなことかもしれませんが、聞いてほしくて。ごめんなさい、疲れてるところを。
私、…甲斐さんと先輩のこと、疑ってしまってます。会いましたかっていうメールの答えをもらってないです。まず、それはどうですか?」

「会ってない」

即答…。

「あ、では、なぜそう返してくれなかったのですか?」

「それは悪かった。やきもちかなと思ったからだ」

…くだらないメールにはつき合い切れないってことかな。

「…やきもちも、あります。でも、会ってないのなら会ってないって言ってくれたら、変な想像を膨らませることもなかったんです。すみません、これは押し付けですね」

そう、始めから想像が作り上げた疑念。
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