可愛らしさの欠片もない
なんだか…曖昧。どうでもいいのかな。そんなことはないはず。指示が中途半端だと後で急ぎだったなんて言われても困るんだけど。無難なのは…。
「直ぐしておきますね」
先に終わらせておくことだ。それがいい。
「あ、そうだね、じゃあそれで」
じゃあ、それでって。……あ。…指輪がない…。あんな話を聞いてると、つい、無意識に見てしまった。元々してなかっただけかもしれないから、指輪の存在だけで決めつけてもいけないけど。もう、離婚してしまったのだろうか。指輪も気持ちの問題だから…もしかして、それで…こんな曖昧な指示に…。心ここにあらず…なんだろうか。だとしたら、余程心を悩ませている、いた、ということだろうか。今も尾を引いてる…。瞬時にスッキリできる別れではなかった、ということなんだろうか。よくは解らないけど、やりきれないような、喪失感のようなものにもみまわれてしまうのだろうか。…夫婦の関係性にもよるのかな…。昨日今日一緒に過ごした訳じゃない。長年一緒に、苦楽を共に暮らしたのだから、簡単ではないだろう。
元々、指輪はしていた人だっけ…?。結婚してる人だと認識してしまったら、その指までは見てなかった気もする。特に…興味がなかった、ということだ。
「…あの」
あ、私は何を言おうとしたんだろう。仕事の話は終わってる。どうしよう。
「あぁ、離婚したんだ、俺」
聞きたかったんでしょ?って感じで、左手を、まるで結婚報告のように指を綺麗に揃えて見せられた。…離婚報告だ。
「どうせ直ぐみんな知るだろうけど。……晴れて独身に戻りました。なんてね」
晴れて、にはどう見ても見えない気がした。こちらの話も深くは詮索できない話だ。