可愛らしさの欠片もない
何もしなければきっとこのまま…。その内、痺れを切らした親が、いい人はいないのか、誰かに頼んで紹介してもらおうかとか。挙げ句は結婚相談所に登録しようなんて言われそうだ。
親が望むものは結婚、それも平凡でいいから、そこそこの内に、話があるうちに片付いてほしいのだ。そして、当たり前のように孫が孫が、となる。
別に結婚を嫌ってる訳じゃない。信頼できる人となら、共に人生を歩める気がする。そう、何より信頼だ。ただ見てくれが良くて好きで、で結婚を夢見てる時期はとうに過ぎた。今はその部分は完全に諦めた訳ではないけど、プラスアルファ、そうだと、尚、良いということだ。
結論を言えば、その共に歩きたいと思う人が今はいないということだ。結婚ばかりではなく、まだ人を好きになってみたい気持ちが捨てられない。まだドキドキする気持ちを体験したいんだ。……何も言えずにただドキドキしてるっていうのも…そればかりでは埒があかない。それは理屈としては充分解ってる。
多分、好きで好きで堪らない、寝ても覚めてもその人のことばかり……なんて領域にはもう侵入できない、それはなんとなく解ってる。そんな恋をするには年齢が高くなったと思ってる。どうして年齢と共に落ち着いたような感情になってしまうのか。いつまでもそれだけでは生きていけないとか考えてしまうからだろうか。優先すべきものが違ってくる?だとしたら、ときめくことも難しくなってしまう。でも人それぞれ?だよね。私はときめくくらいはしていたいのよね…。
「あの、咲来さん、これ、お願いできますか?」
「あ、はい。…すみませんでした、急ぎですか?」
ちょっと驚いてしまった。考え事をしていたのもあったけど……大島さんだ。私に直接言って来るなんて…。
「そこそこに」
そこそこに…。それは対処に困る。
「今日中でいいものですか?」
「……あ、うん、そうだね、それでいいよ」