可愛らしさの欠片もない
「大島さん…」
あ。呟くように声が出てしまった。
「ご結婚は早かったのですか?」
あ、無神経…今、こんなこと、聞いても良かっただろうか。…よくはないはず…よくないよね、…ごめんなさい。
「あぁ、うん、早かったよ。俺もあいつも若かった…。歳は同じ。……よく考えもせず、好きだから一緒になったって感じだったよ。それでいいと思ってたから。ほら、好きって無敵?ハハハ、…みたいに思ってて、何でも乗り越えられると思ってる。いや、この先で難題にぶち当たるなんてことも考えてもなかったよ。頭に全くないんだもん。そんなこと、深刻に考えておこうなんて思ってもないから」
なるほど。でもそのときはそのときの思いだから、今こうなっても失敗したとは思ってないでしょ?
「幸い、というか、子供は居ないんだ。だから、あいつも身軽になれるな…。世話のやける俺が居なくなるんだから」
世話、焼いてくれてたんだ。…世話というのだから、疎かになってきてたのかな。あー、……う、ん。色々、親のこと以外にも蓄積されたものもお互いにあるのだろう。
「では親御さんのお世話は大島さんが…」
って、ことになる。
「そうだね。母親は元気だから、今は無理せず交代交代でね」
そうなんだ。
「あ、何だか悪かったね。誰にも話してないこと聞かせちゃって。ちょっと話し出すと聞いてもらえてることに甘えたりして、ごめんね。…はぁ…有り難かったよ、ちょっと楽になれた気がする」
「そんな…、気にしないでください」
誰彼なしに話せることでもないだろう。私もきっかけというか、妙に話を聞き出してしまったような気がする…。
「じゃあ、それ、よろしくね」
「はい、今日中に」
「うん。それでいいから」