可愛らしさの欠片もない

あ、なんだか……結果としては話がしたくて来たのかな。やっぱり誰かに聞いてほしくて、とか。だって、今の感じじゃ、この書類は大して急いでるようでもなかったし。全く処理しないでいいわけではないけど……。親の介護……離婚…。

「ねえ?なんか言ってた?」

あっ、びっくりした…“彼女”だ。

「大島さん、来てたでしょ?長々何か話してたじゃない」

わざわざ…今、来ますか。あなたと私のデスクは離れてるというのに。見てたのだろうか。…見てたんだろうね。……。

「はい、書類を頼まれて」

「それだけ?」

「え、はい」

それだけですよ?で、押し通します。

「本当にそれだけ?」

「はい」

何か言ってた?、と聞かれても、それは私と大島さんの間での話ですから。仕事の話でもないから、ペラペラと言えるはずもない。

「そうなんだ……まあいいけど。私は正解がほしかったのよね」

「…正解?」

「離婚したのは間違いないの、これはね確か。それでその理由よ」

不倫らしいと言ってましたね…だから、それが正しかったのかってことですか…。そこまで知りたいですか?

「私の言った通りかどうか気になるじゃない」

噂話の張本人だから、嘘だと困るってことですか。でも今までだって色々違ってたことありましたよね。…正解とか…私は気になりません。全然なりません。元々よその夫婦のことじゃないですか。
…どうして…、そんなことどうでもいいじゃないですか、知る必要があります?、と言えないんだろう。多分、それを言ってしまったら、この直後から、ことあるごとに私は女性社員から排除されるだろう。そうされてしまうことが嫌で、不安で言えないんだ。適度な距離感で居ることが一番無難だから。
ずっと矛盾したこの状況で葛藤だけはある。……あ、フ…大島さんを庇うの?とか、勘違いされるかも。…危ない。
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