可愛らしさの欠片もない

「きっとそのうち解るわね。男の人はいいわよね。多少お金も持ってたら若い子とだってつき合えるし、再婚だってできない話じゃないし」

「…」

とても、頷きもできない。早く自分のデスクに帰ってくれないかと、本当に思ってしまう。
周りに人がいないからといっても話すには気が引ける内容だもの。

「あ、それ、大島さんの。私がやろうか?」

…これは。……何か離婚のヒントにでもなる物があるわけでもないのに。返すタイミングで直接にでも聞くつもりなんだろうか。そんな気がしてならない。

「大丈夫です。これは私が預かりましたから、断りなしに人に任せてしまったなんて思われるのも嫌ですから」

…珍しく自己主張したような話し方になってしまった。…大丈夫だろうか。

「あ…そう?じゃあ、出来そうになかったら言ってね」

もしかしたら見えない反感をかったかもしれない。

「はい、有り難うごさいます」

抱えた仕事はない。今日中なら私でも充分余裕で出来るはずだ。それより、変に仕事を回したと思われたらそれはそれでしんどいことになる。
……はぁ。知らなくていいことだと思うのに、どうしてわざわざ人のプライベートに踏み込もうとするんだろう。それが楽しいのだろうか。楽しいんだろうね。
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