可愛らしさの欠片もない
何を話したらいいものか、全く解らない相手と話すとなると話題に困ってしまう。まずは知ることからって言ってくれてた訳だし。私に質問をしてくれてもいいのだけど。
「あの…」
かといって、こっちはいつもと同じ見切り発車だ。何も考えずに話しかけてしまった。さっきまで、なんとかしようと必死に言葉を紡ぎ出していた自分はどこに行ったのやら。
何も知らないのだから、知りたいこと、あってもよさそうなものなんだけど。んー。
「はい」
「あ、えっと」
そうだ、年齢は聞いても妙な探りとは思われないよね。そのくらいで印象を悪くすることもないだろう。
「おいくつですか?」
なんて超オーソドックスな質問。口に出してみると凄くベタだ。こんなときは自分の歳を先に言うべきなんだろうか。
「私は37です」
あ、いい年齢。なんだか瞬時にそう思った。理想的な年齢のような気がした。
「私は29です」
私はどうなんだろう。29。お聞きの通り、30は目の前だ。ただ焦って、駄目元で飛びついた変な女だと思われないだろうか。いつも利用する駅で男を漁ってたって……。
「こうしてお互いを知って、つき合って、最終的には結婚、てこと?」
……え?…急に話し方が変わった。年齢を知ったからだろうか。このつき合いは結婚を意識してるのかって。
「あ、えっと、今はそこまでは考えてもいませんでした。とにかく、気持ちを伝えたくて」
「でも、それで終わりってことではなかったでしょ?伝えるだけ伝えたらそれでいいってものでもない。そういうものですよね?」
「そう、ですね…」
…確かに。なにも先を望まないなら、ただ思っているだけでいいんだ。大人しく思ってさえいればいい。それはここに辿り着く前に散々悩んだことだ。
だから、告白したということは、思ってなくても何かしら先を望んでいるということだ。
その第一歩が、つき合うということだ。それを今から始めるってことだ。結婚というワード、確かに日頃から頭にはあるものだけど、今のこの場に限っては、そこまでの考えは全く頭になかった。ただ会えること、伝えること、それが最重要だった。