可愛らしさの欠片もない
「止めないで聞いてくれないか、進まない。これからつき合うんだから、当然、知っておくべきことだと思うけど?」
「だからつき合うって…そのことは…」
つき合うって…甲斐さんの口からつき合うという言葉を聞いて不覚にもドキッとしてしまった。こんな状況で何をときめいてるんだか…。
なしにしてほしいと言ったはず。だから、聞かなくていい話って言ってるのに。
「そこ、そればかりを繰り返していては進まない。つき合うんだから、とにかく、俺が話しておくべきこと、話すから、まずは反論せず聞くだけ聞いて」
さっきからつき合う、つき合うって、決めたことだけど…どうなのよ、こんな…決めつけて言って。………反論て。聞く必要はないって言っただけで、別に逆らってる訳でもないのに。…逆らってるのか。
「…どうぞ」
「フ」
笑うところ?…。
「離婚の原因は向こうにあるから。嘘ではない。浮気だ」
はい、出た…。出ましたよ。浮気。しかもそれは奥さんの方だって。そんな……私に解らないからと言って…奥さんが?本当だろうか…。嘘かもしれない。
「その顔…。信じない、疑う、その気持ちは解るけど、これが真実だ。どうせ浮気をしたのは俺の方で、それを認めず長引かせてるとでも思ったんだろ…」
「当然です」
フン。どんな人か知らないんですから。…それに、認めるのは悔しいけど…こんなに素敵な人は困るほどモテるだろうから。
「当然てな…。最低だな…」
テーブルの下でもて余すほど長い脚を窮屈そうに組み直した。