旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
『いつでもいいです。と言うか、差し上げますから持っていてください』
自分がどんな顔をしていたかは、鏡がないので見えない。でも多分、私は微笑んでいた。と、思う。
「……どうして……」
本の内容は、途中から頭に入ってこなくなった。不意に思いだした図書室での一コマが、頭の中に焼き付いて離れない。
付き合っていたなら、微笑ましい思い出の一コマだったはず。なのに不思議と、胸が痛い。
どうして? まるで、叶わないと決まっている恋に身を焦がしている物語のヒロインみたい。
あるいは、私が片想いをしているときの記憶だったのか。
頭痛がしなかったので、本を閉じて静かに考えてみる。が、それ以上のことは思い出せなかった。