旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 タクシー乗り場まで歩いた私は、振り返る。疲れた母の顔に言葉を放った。

「一度私に大嘘を吐いた人たちのことを、どうやって信じればいいの?」

 言葉を切り、母を見つめる。母はまるで胸を拳銃で撃たれたような顔をしていた。実際、手で胸の辺りを押さえていた。

「……ちょっとひとりにして」

 タイミングよく来たタクシーに乗り込んだ。

「どちらまで?」

「ええと……」

 どこに向かえばいいのか。さっぱり見当もつかなかった。とりあえず自宅とは逆の方向を指示する。

 ゆっくり発進したタクシーの後部座席から、バックミラーをのぞく。母はどうすることもなく、ただ立ちすくんでいるように見えた。

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