旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

「わあ……素敵」

 原田さんのひとり暮らしのマンションに着いた私は、嘆息を漏らした。

 白とベージュで統一された部屋は、広々として見える。生花がオシャレな花瓶に活けられているのを見るだけで、「この人は私と違い、丁寧な暮らしをしている……」と感心してしまう。

 そもそも、約束もしていないのにいきなり他人を呼べるということは、普段からきちんと綺麗にしているってことだ。

 すすめられるままお風呂をいただいて、途中で買った下着とパジャマに着替えてリビングに戻った。

 ぼんやりとテレビを見ていると、後でお風呂に入った原田さんが戻ってきた。

 美人って、どんなスキンケアをしているんだろう。私は原田さんが肌のお手入れをするのを眺めていた。

「そういえば萌奈ちゃん、携帯の充電は?」

 不意に原田さんが顔を上げたので、今まで存在を忘れていた携帯のことを思い出した。

 自分のバッグを探り、携帯を見ると電源が切れていた。真っ黒な画面に、なんだかホッとした。

< 183 / 245 >

この作品をシェア

pagetop