旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 思い切り図星を突かれて、私は下を向いた。そうかもしれない。嘘を吐かれて驚いて腹が立って、人生初のぶち切れを体験してしまった。

 母にも思い切り嫌な態度をとって……だから今さら、帰れない。

「くっだらない。謝って実家に入れてもらいなさい。どうせひとりじゃ暮らしていけないんだから」

「あうう……」

 佐原さんは私に生活能力がないことを見抜いている。正論すぎて反論できない。情けな。

 うなだれる私を見かねたのか、原田さんがポンと私の肩を叩いた。

「仕方ない。今日はうちに泊まる?」

「ちょっと、大丈夫なの? 寄生されたら大変だよ」

 ひどい言われようだ。

「いいじゃない。落ち着いたら帰るわよねえ?」

「はい。どうかよろしくお願いいたします」

 原田さんに後光が射しているように見え、眩しくて目を覆った。まるで女神様だ。

 こうして私は、原田さんに一時保護されることとなった。

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