旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 笑みを漏らす彼の表情に、嘘はない。

 根拠はないけど、そう感じた。

 だって、話を聞いているだけで、体が反応している。彼の話は真実だと訴えるように、体温が僅かに上がったのがわかる。

「そうだったんだ」

 彼が私を好きだったということを信じようとすると、私も彼のことを少し好きになったような気がするから不思議。

 さっきまで、まだ出会ったばかりみたいなよそよそしさがあったのに。

「もう少しここに居てもいい?」

「もちろん。紅茶でも淹れようか」

 公共の図書館で飲食は絶対に禁止だけど、ここは彼と私の専用。

「はいっ」

 心からの笑顔が零れたのが自分でわかった。

 彼も今日一番の微笑みを返してくれた。

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