旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
「君は言ったんだ。入社したときから気になっていたと。俺のことじゃなくて、小さな図書室のことを」
「昔から図書室が好きなんです」
「うん。全く同じことを、そのときも聞いた。それが俺たちの始まりだった」
彼の言葉に疑いを持つような点は見受けられなかった。
私は本が好きで、図書室と聞いて我慢ができなかったんだろう。たとえそこが、副社長お気に入りの部屋でも。
「俺に話しかけようとして出入りする女子社員もいたが、俺は図書室で無駄にしゃべくる者は遠慮せず叱責した。そうしていたら誰も来なくなった」
「あらら……」
彼を狙う女性社員がいたということか。で、果敢に話しかけたら怒られたと。ちょっと気の毒。
「でも君は、キラキラした子供みたいな目で本を吟味して、静かに読み耽った。だから好感を持った」
「じゃあ、副社長から話しかけてくれたんですか?」
「ああ、そうだよ。読書の邪魔をされても、君は嫌な顔をしなかった。ただ、とても驚いていたな」