旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
厚い胸板や割れた腹筋、腕の筋肉の線を見てドキッと心臓が跳ねる。
芸能人の体をテレビや雑誌で見たことはあるけど、こうして生身の肉体を目前にしたのは初めてだ。
「いえいえ。入ってきま~す!」
一度しまった下着をもう一度出し、お団子のように丸めて握りしめ、浴室へ走った。
お風呂掃除は、私がいなかった午前中にハウスキーパーさんがやってくれたらしい。
広々とした浴槽で手足を伸ばすと、ふうと吐息が漏れた。
まぶたを閉じると、目撃したばかりの景虎の裸体を思い出してしまう。
全然覚えていないけど、付き合って結婚までしたってことは……。
私、あの人とキスや、それ以上のことをしていたってことだよね。
さすがに今の時代、まっさらなままでお嫁に行くことは少ないはず。結婚するとなると、体の相性だって重要だろうし。
と、二十歳まで何の経験もない私が相性とか言っても説得力がないけど。
「あわわ……」
自分も知らない間に、そういうことを彼としていたなんて。
想像しそうになって、慌てて顔をばしゃばしゃと洗った。