旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
着替えや寝る支度を済ませ、指定されていた寝室へ向かう。
お風呂が二つもあるのに、寝室は広いのがひとつだけ。
のろのろとドアを開けると、キングサイズのベッドで景虎が本を読んでいた。
うわあ……。
紺色のパジャマで文庫本を読む、無防備な彼に見惚れる。
「おいで」
景虎は私に気づき、自分の隣のスペースをぽんぽんと叩いた。
そうか、やっぱり一緒に寝ていたんだ。夫婦だものね。そのためのキングサイズだよね。
「えとあの、お風呂の中でよーく考えたんだけど……。やっぱり、いきなり一緒に寝るのは、厳しいかなって……」
ぼそぼそ零す私に、ベッドから降りた彼が近づいてくる。
顔は冷静そのものだけど、ムッとしているのか、纏う空気が尖っていた。
「どうして? 俺たちは夫婦なのに」
「いやあの……」
「抱き合う感触で思いだすかもしれない。さあ」
それって、今からベッドの上で抱き合いましょうってこと?
後ろに退こうとした私を逃すまいとするように、景虎は長い腕を私の身体に回した。