旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
だから首や体のあちこちが痛いのか。私はすんなりと納得する。
「あなた、三日も意識を失って寝ていたのよ。私はもう、あなたが起きないんじゃないかと心配で心配で……」
ベッドに突っ伏し、およよと泣きだした母の背中を、看護師さんが優しくさすった。
「綾瀬さん、起きたばかりで申し訳ありませんが数点質問させてください」
「はい」
「お母さんの顔はわかるようですね。お父さんや他のご家族の顔も思いだせますか?」
天井を仰ぎ、家族の顔を思い浮かべる。
「思い出せます。名前も」
私は先生に家族構成を話した。ちゃんと合っているようで、先生は満足げにうなずいた。
「あ、そういえばハムスターもいました。クッキーっていう名前の、ゴールデンハムスターで、その子がとっても可愛いんです」
ハムスターも大事な家族だものね。得意げに説明すると、母が私の肩を軽く叩いた。
「クッキーはあなたの卒業旅行中に急逝したのよね。あのときは悲しかったわ」
「えっ?」