赤ずきんは狼に救われる
「……いた!」

僕は木の陰からそっとあの子の姿を見た。大きな石に腰掛け、歌を歌っている。金髪の髪に赤い瞳、瞳と同じ赤い白いエプロンのついたワンピースを着ていて、赤いフードをかぶっている。

「やっぱり可愛いな……」

僕は高鳴る胸を押さえ、あの子の歌声に耳を傾ける。名前も知らないその女の子に僕は初めて見かけたその時に一目惚れした。僕にとって初めての恋だ。

女の子はずっと歌い続ける。素敵な恋の歌だ。女の子の歌声を聴くたびに、僕の想いもこの歌のように届いたらと思ってしまう。

「……そこに誰かいるの?」

ジッと見つめすぎたみたいだ。女の子が僕のいる木の方を見つめる。僕は姿は見せず、「ごめんね。とても素敵な歌声が聴こえたから……」と謝った。

「本当!?嬉しい!!」

フニャリと女の子は笑う。僕に向けて笑ってくれていることが嬉しかった。ずっと関われないと思っていたあの子と、今話している。胸の高鳴りが止まらない。
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