赤ずきんは狼に救われる
「あたし、リリー。あなたは?」

「ぼ、僕はアレン!」

リリーって言うんだ。素敵な名前……。この名前が似合うのはきっと君しかいないんだろうな。

「姿を見せてくれないの?」

リリーがそう言った刹那、冷たい現実が僕を包み込む。忘れるな、と言うように尻尾と耳の感触がした。

「うん。恥ずかしいから」

僕は嘘をついた。本当はありのままの姿を見せたい。でも、リリーが怖がる姿など想像もしたくないんだ。

「アレンはこの森に住んでるの?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、またきっと話せるね!」

リリーの言葉がとても嬉しい。こんな僕とまた話したいと思ってくれているなんて……。

こうして、僕はリリーを見るだけではなく少しずつ知っていくことになる。そして見てしまうんだ。彼女が抱えている痛みや苦しみをーーー。



僕とリリーが出会って二年ほどが経った。リリーはこの森に来る時はいつも赤いフードをかぶっている。僕も黒いフードを忘れない。

最初の頃は僕はリリーと話すことに緊張していたけど、今はこの話す時間が愛おしいんだ。リリーにこの姿は見せていないけど。
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