赤ずきんは狼に救われる
「……頭なんて怪我することって簡単にないよね?どうしてそんな怪我してるの?」

僕は震える声で訊ねる。嫌な予感しかしないけど、訊くしかない……。

「あたしが全部悪いの。あたしが何もできないから……」

そう言ってリリーは立ち上がり、家へと帰っていく。僕の胸がザワザワ揺れた。



僕はリリーがいなくなっても、ただその場に突っ立っていた。あの怪我が頭から離れない。やっぱり、リリーはーーー。

僕の頬を涙が伝う。僕は気が付けば木の陰から飛び出して走り出していた。リリーを助けなきゃ、その思いだけで走っていた。

人狼とかそんなの気にしてられない。だってずっと隠れていたらリリーを……好きになった女の子を守れない。

耳に、神経に、全てを集中させる。リリーの足音や気配を頼りに僕は生まれて初めて森の外へ出た。リリーは森の近くにあるこの家に住んでいるらしい。

「ここがリリーの家……」

リリーの家の周りにあるご近所と呼べる家はかなり離れている。家が孤立した状態だ。
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