イジメ返し―新たな復讐―
わたしを苦しめる方法をカスミちゃんはよくわかっている。

ううん、違う。カスミちゃんにかかれば、どんな人間だって苦しめて痛めつけることができるに違いない。


「わっ、ヤバ、水が垂れるんだけど!」

ホウキの柄の部分に引っかかった上履きを便器の中から引っ張り出すと、女の子はホウキごと床に投げ捨てた。

ベチャッという音を立てて床に転がった上履き。

無理矢理便器の中に押し込まれていたせいか、上履きの形が変形してしまっている。

見覚えのある名字がかかと部分に記されている。

「えっ、名前書いてある……?」

掃除ロッカーから取り出したデッキブラシの柄でわたしの上履きをツンツンとする女の子の横でわたしは真っ青な顔で立ち尽くすことしかできなかった。

手足が震えて呼吸が浅くなる。

口の中がカラカラに乾いて目頭に涙が浮かぶ。

終わりだ。もう終わり……。

わたしはみんなにいじめられっ子というレッテルを貼られてしまう。

「――ちょっとごめん!」

そのとき、わたしの横を通り過ぎた誰かが素手のまま上履きを拾い上げた。

< 58 / 292 >

この作品をシェア

pagetop