きみと秘密を作る夜


向かったのは、遼の家。

ふたりきりで静かに話せる場所が他にないので、仕方がない。


チャイムを押してしばらくすると、ドアが開く。



「久しぶり」


遼は、少し髪が短くなっていた。

たったそれだけのことだが、この3週間ほどがいかに長かったかと思わされる。


久しぶりに会う照れ臭さと気まずさで、互いに曖昧な笑みを浮かべながらも、私は遼の部屋に入った。



「リナ、最近どうしてた? あ、何か飲む? 寒かったら言ってな?」


間を埋めようとしてか、矢継ぎ早に言う遼の言葉に首を振る。



「大丈夫だよ。遼こそ最近どうしてた?」

「俺は、バイトばっかだったな」


バイト。

晴人と一緒のガソリンスタンド。



「ハルが急に辞めてさ。ちょうどリナのおばあちゃんが亡くなったあとくらいの頃かな」

「えっ」

「あいつ、何でだか金貯めるためにとか言って、ほぼ毎日シフト入ってたのに、いきなりバックレだぜ? こっちは穴埋めさせられて大変だよ」
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